LOVIN’ YOU.

19歳、20歳。
僕はまだバンドを結成してもおらず、そのコンセプトはおろか、 まともなオリジナル曲すら持ち合わせていなかった。
要するになにもしていなかった。

ただ、「いつか僕はバンドをやるんだ」という 漠然とした曖昧な甘ったれた目標だけがあった。
「いつかっていつだよ」という焦りは、コンビニの夜勤のバイト中、虚しくも淘汰されていく運命にある新商品を眺めては、日に日に大きくなっていった。

給料日の夜勤明け、レコード屋に直行した。
焦りの大きさの分だけレコードを掘り続けた。
そうすることで自分の焦りに言い訳をした。
目の下を真っ黒にした僕は、手に取ったレコードのバンド名に嫉妬した。

やっぱりバンドがやりたいなと思った。

Embroidery：今菜津美
text:こすげ