What’s Going on.
俺はなんだか疲れていた。
俺はロックンロールに思春期の大半の時間と持ち得る全ての金を捧げてきた。
足立区の友達に深夜にスポッチャへ行こうと言われても、やっぱ土手でBBQっしょって煽られても、同窓会に行かないとか意味分かんなくね?普通行くべ?とかSMAPの中居にインスパイアされたと思われる不良の言葉にも貸す耳はなかった。
俺にはそんな時間はない。やらなければならないことがある。
テープレコーダーに向かって、つたない俺の歌を吹き込む。
弦は切れている。
時には母親の「アンタ、ホンマうっさいんじゃ」という怒鳴り声も同時録音されてしまう。
それでも俺は曲を作らねばならなかった。なぜなら俺はロックンローラーだから。
私はロックンローラーにならなければならない。
こんな中2の英作文みたいな文章が毎日頭の中を支配した。
2014年。バンド活動を休止した時、死ぬほどの暇を持て余した。
とにかく毎日やることがない。俺はなんだか疲れていた。
芥川龍之介の言う「ぼんやりとした不安」に包まれている気がした。
もう音楽を聴くのはやめようかしらん。
なんとなく目についたMarvin Gayeのレコードに針を落としてみる。
まさに心の洗浄。圧倒的洗浄感。
頭の中を覆った白い霧のようなものが消えていく気がした。
ポタポタとIKEAのソファーに涙が溢れ出す。
一度諦めたら全て終わると思ってたんだ。
俺たちもう終わっちゃったのかな。
バカヤロー、まだ始まってもいねえよ。
Embroidery:今菜津美
text:こすげ