春夏秋冬
季節のない街に生まれ
父が所謂転勤族のため、幼少のころから転勤を繰り返した。
行くとこ行くとこで家が変わり、方言が変わり、友達が変わり、街のにおいが変わった。
夏休みと冬休みは広島の両親の実家に遊びに行った。
古くなっても変わらず佇むばあちゃん家に安心した。
父の転勤の内示が出るのは大体毎年1月末くらいだったろうか、親の仕事の都合は分からないが、また知らない街に行くのかと思うといやだなぁと思った。
僕がこの町を去っても、町はなんにも変わらず、また別の誰かが僕の友達と友達になって、この公園できっと遊んでいる。
僕と入れ違いで転校していった僕と同じような見知らぬ友達がいることを考えて、なんだかなぁと思った。
僕が東京に引越してくる前、小学生の頃、世界に一つだけの花が流行った。
確かに僕らは元々特別なオンリーワンなのかもしれない、ただそれは公園の片隅の花壇に咲いたパンジーのように離れてみればどれがどれだか分からないくらいのものなのかもしれない。
それでもパンジーはしゃんと胸を張っている。
大人になった。
自分で住む家を自分で決めている。
賃貸借契約を更新する。
今日という毎日を積み重ねる。
今日ですべてが終わるさ
今日ですべてが変わる
今日ですべてがむくわれる
今日ですべてが始まるさ
Embroidery:今菜津美
text:こすげ