タンゴ.
破壊の音楽。
大学に入学してすぐの頃、先輩にどんな音楽が好きなんだ?と問われた。
IpodでJAGATARAをかけて、こういう本物のロックバンドの音楽が好きだ、と答えた。
先輩は首をもたげて、
「お前はこんな『破壊の音楽』ばかり聴いているからダメなんだ。」 と、謎ジャンルを提示された上で、文字通り、ダメ出しをされた。
お前はこういう音楽を聴かなきゃダメだよ、 そう言っておもむろにCDケース(CD-R約50枚)を渡された。
口ぶり的には、クラシックや王道JAZZ、恐らくそういう類いの音楽が詰まっていると想定された。
理論で人の心を圧倒する音楽、そうか、僕に足りないものは、それなのか。
音楽的な教養が、僕には確かにないのだ。
自らの非力さに、悔しさで、足が震えた。
でも、そういう音楽も気持ちって大事なんじゃないの、そんな俺の戯言は虚しく胸の内で消えていった。
恐る恐る、ケースを開く。
一枚目に「ART-SCHOOL」が入っている。
「…ん?」あの時の戸惑いを僕は未だに鮮明に記憶している。
ただ、とにかく先輩がART-SCHOOLが好きなんだというピュアな気持ちが伝わってきた。
とにかく悪い人じゃないんだ、後輩思いの優しい先輩なんだ。
その後、1年の時を経て、先輩から「お前の好きな曲だけやるバンドを作ろう」と持ち掛けられ、僕らは「幹部 N‘ ROSES(通称カンズ)」を結成した。
学園祭、僕は先輩と謎ジャンル『破壊の音楽』だけをひたすらプレイした。
きょとんとした学生たちの前にして、風に谷のナウシカの巨神兵的なパワーを自らに感じ、『破壊の音楽』の意味が少しだけ分かった気がした。
先輩と会ったら、またきっと僕らは、『破壊の音楽』に乾杯するだろう。
さあ しっかり 狙いをさだめて
いつものように おやり
Embroidery:今菜津美
text:こすげ