Bellbottoms.
なんなんだこれは、こんなんありなんか。
Bluesを力ずくで捻じ曲げて拡大解釈した、そのサウンドに、
俺のイヤホンはぶち壊されそうになる。
目が覚めて、顔を洗って、歯磨きをして、ネクタイを締める。
満員電車に乗って、新聞記事を読んで、オフィスのPCの前に座る。
ぬるくて安っぽいインスタントコーヒーが眠気を覚ますって訳でもない。
悪いことなんてないさ、みんな生活するために生きているんだろう。
千円札を握りしめて、立ち飲み屋で煙草を燻らせ、ぼんやりと野球中継を眺める。
どっちの球団が勝っても負けても僕には関係はない。
ドラフト6位の5年目の新人が中継ぎ4番手投手の代打で登場する。
誰やねん、球場に霞む、まばらな歓声。
消化試合の雰囲気に士気が下がる応援団。
緊張のプロ野球初打席。
社会人上り、もう後はない、本人が一番理解している、という目つき。
初球、デッドボールを受ける。
もちろん全力で一塁に向かう。
出塁した、紛れもない成果だ、悪くはないだろう。
リードを目いっぱいにとって、投手にいくつも牽制させる。
与えられた責務を全うする。
サインはヒットエンドラン、打者は空振り、新人はむなしくも2塁で刺された。
歯を食いしばって、ベンチに引き返す。
その後の守備には、つかなかったようだ。
なにが悪いってわけじゃないんだ。
ただ、このまま終わっちまう、その前に、
どうかその前に、お前のBluesで俺の頭をぶち抜いてくれ。
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text:こすげ