Can’t Help Falling In Love
中学一の不良の家に遊びに行くといつもハイスタがかかっていた。
主にドン・キホーテで調達したと思われるインテリアの数々に囲まれ、
先代の不良から譲り受けたベースをボンボンボンと弾いている。
学校なんて行かない、ゲーセンが主戦場、煙草をふかして、原付を乗り回す、僕の友達。
先生に言われるがまま学級委員長になった私。
自分の意志を持って、生きているように見える彼の姿に、少なからず憧れのようなものがあった。
中学三年生、最後の夏、彼を思い切って野球部に誘った。
万年初戦負けの弱小校だ。
最後に彼と自分の好きなことを一緒にやってみたかった。
考えておくよ。
柴又の河川敷で彼が放ったスリーベースヒットを忘れない。
史上初なんじゃないかしらと、延長戦に突入。
しかしながら、サヨナラ押し出しフォアボールで、あっけなく僕たちは初戦で敗退した。
ハイスタが奏でる高速のエルビスのバラードが頭の中を駆け巡る。
暑い夏の日。
Embroidery:今菜津美
text:こすげ