Anarchy in the U.K.
「パン! パン! パン!」
中学2年生、僕が通っていた足立区の学習塾に突如、爆裂音が響き渡る。
ニューヨークの世界貿易センタービルに旅客機が突っ込んだ、あのニュース映像が鮮明に頭をよぎった。
テロだ、と思った。塾の先生は机の下に隠れろと叫ぶ。
僕の人生はこのまま終わるのかもしれない。
塾の外から、笑い声が聞こえる。
近所の中学生が爆竹を塾にふざけて投げ込んだらしい。
爆竹をふざけて投げ込む神経を心底理解することができない。足立区はもう終わりだ。
僕はそんな足立区から少しでも離れるため、電車で1時間くらいの高校に通うことにした。
友達は初日にできた。同じ電車で通学する足立区出身の奴。電車が同じなんだ、仕方ないでしょう。
足立区って治安悪いよなーって話をした。そうだね、と友達も言った。
「俺が通ってた塾なんてさ、爆竹投げ込まれたんだぜ」
僕にとっては、最早ちょっとした足立区武勇伝の一つとなっていた。
「ん……あぁそれ、、俺たちだわ~…」照れ臭そうに彼は頭を掻いた。
かつてのテロリストは今目の前にいて、僕らは一緒に下校している。
後に、彼とは学園祭でAnarchy in the U.K.を一緒に演奏した。
勝手にしやがれ、彼のそんなヤケクソなドラムのエイトビートを今も覚えている。
model:HAL(The Mash)
Embroidery:今菜津美
text:こすげ