勝手にしやがれ / SEX PISTOLS

2020.11.24

Anarchy in the U.K.

「パン! パン! パン!」
中学2年生、僕が通っていた足立区の学習塾に突如、爆裂音が響き渡る。

ニューヨークの世界貿易センタービルに旅客機が突っ込んだ、あのニュース映像が鮮明に頭をよぎった。

テロだ、と思った。塾の先生は机の下に隠れろと叫ぶ。
僕の人生はこのまま終わるのかもしれない。

塾の外から、笑い声が聞こえる。
近所の中学生が爆竹を塾にふざけて投げ込んだらしい。
爆竹をふざけて投げ込む神経を心底理解することができない。足立区はもう終わりだ。

僕はそんな足立区から少しでも離れるため、電車で1時間くらいの高校に通うことにした。

友達は初日にできた。同じ電車で通学する足立区出身の奴。電車が同じなんだ、仕方ないでしょう。
足立区って治安悪いよなーって話をした。そうだね、と友達も言った。

「俺が通ってた塾なんてさ、爆竹投げ込まれたんだぜ」
僕にとっては、最早ちょっとした足立区武勇伝の一つとなっていた。

「ん……あぁそれ、、俺たちだわ~…」照れ臭そうに彼は頭を掻いた。
かつてのテロリストは今目の前にいて、僕らは一緒に下校している。

後に、彼とは学園祭でAnarchy in the U.K.を一緒に演奏した。

勝手にしやがれ、彼のそんなヤケクソなドラムのエイトビートを今も覚えている。

model:HAL(The Mash)

Embroidery:今菜津美
text:こすげ

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