灰色の街.
ハードボイルド。
ヘミングウェイなんかに、かぶれちゃってるのがカッコいいのではないか、という思い込みが暴走する二十歳の頃。
膝が破れまくったクタクタのジーンズの左後ろポケットに「日はまた昇る」を、右後ろポケットには「ブラックニッカ」をぶち込んで、煙草をふかして、大学の授業をサボった。
ああなんか多分俺今かなりハードボイルドだなぁって、一人でイキり倒して、キャンパスを駆け巡る女子大生たちを横目で眺めながら、敢えてシケモクを口にした。
なんでシケモクかって、この場合その方が絶対的に「ぽい」と思ったからである。
女子大生は眩しいよな、でも俺はさ、今は文学にかぶれて安酒飲むのが仕事みたいなもんなのさ、君たちに構ってる場合じゃないのよ、俺ってなんつったってハードボイルドだからさ。
この頃に読んだ文学作品の数々は恐ろしく記憶に残っていない。
きっと安酒の影響で脳がとろけて、頭の片隅で縮こまって詰まってしまっているのだと思う。
とにかく松田優作の歌声がセクシー、抜群の擦れ具合い。
そして、曲も演奏も素晴らしい。
CREATIONを引っ提げて歌う俳優、もう俳優とか言ってらんないよね。
BLUES・レゲエ・ロックロール。
音楽やってる奴とかマジ全員不良でやばすぎて狂っちゃてるよこの親不孝モン!みたいなカッコよさが濃縮されています。
灰色の街が主題歌の映画「ヨコハマBJブルース」で松田優作が売れないブルースシンガーをやっています。
観終わったらさ、気付けばみんなハードボイルドだよ。
Embroidery:今菜津美
text:こすげ